黄門さまと犬公方 (文春新書)



黄門さまと犬公方 (文春新書)
黄門さまと犬公方 (文春新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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不勉強、非常識も、ここに極まれり

読んでいる途中で、本書、ブン投げてやりたくなった。
水戸徳川家初代・徳川頼房が、長男・松平頼重の誕生を認知しなかったのは、尾張、紀伊、両徳川家の兄貴たち2人に男子がいないのに遠慮したからだって? まさかね。
論旨のベースとなる基本資料の存在をきれいに忘れて、何が歴史学者だっての。系図さえ確かめず、ぐだぐだと、よく書けるね。恥ずかしくないのかね。
頼房の長男・頼重と、3男「黄門さま」こと徳川光圀の中間に、他にも1男3女がいた事実をどう説明するつもりなのかい? 本書の著者は、つまり光圀たち水戸徳川家の家系図すら確認しないで、でたらめな想像を書き立てたってことじゃないか。まるでカストリ雑誌かスキャンダルジャーナリズムの世界だね。
江戸時代は一夫多妻制の社会だから、妻妾とりまぜて配偶者は何人いたって構わないんだけれど、でも、配偶者でもない、なさぬなかの女性を妊娠させちゃったんじゃ(乳母の娘に手を出した)、やっぱり不味いんだよ。女性を転ばしておいて配偶者に迎えるでもなし、頼房くんはズルを決込んで、お惚けに出たというわけさ。それが頼重や光圀。
ところが光圀誕生のときは、頼房の養母お勝(徳川家康夫人の1人=実子がなかったので頼房を養子にした)が、せがれの横着を見るに見かねて必要な手続きをとったんで、頼房の男子として公式に認知されることになった。のちに別の女性に産ませた次男が夭折して光圀が世子に繰上がったんだけど、そのときは未だ、頼重の存在が公儀に届けられていなくて、それで3男の光圀が水戸家を継ぐ立場になったと、そういうわけのことさ。
著者の想像するところなど、系図1枚で、まるでアサッテのまと外れと解る。いくら何でも、お粗末すぎる。それでも一丁前に研究者づらするつもりなのかね? 好い度胸しているじゃないか。
犬公方こと5代将軍綱吉の相続にしても、有栖川宮云々なんていう法螺話を真に受けるようじゃ話にならない。甲府宰相綱豊(のちの6代将軍家宣)19歳、館林宰相綱吉35歳と、2人も候補適格者がいるのに、何で宮様なんぞ頼みにしなければならないのか? よし宮様を将軍位に付けたって、周りが誰も承知しないよ。そんなのは、幕府が宮家(もとは高松宮家)を再興してくれた御礼に、たまたま有栖川宮幸仁親王が江戸に来ていたのに託けた稗史小説。
このケースで問題になったのは、綱豊と綱吉、どっちを次代の将軍に推すかだった。
もし、輩行の交代を優先する儒教式(中国式)相続法をとるなら、同世代の綱吉ではなく、次世代にあたる甥の綱豊のほうが後継者となるのが順序(11代将軍・家斉のケースがこれにあたる)。だが、日本では兄弟相続の例も多い。
徳川家には長子相続という決まり以外に定まった相続ルールがなかったので、綱豊と綱吉、両者に資格の優劣が付けられず、将軍継嗣として衆目の一致する徳川家後継者が中々決められなかったと言うのが本当のところ。たぶん、死期の迫った4代将軍家綱自身の決断によったんだろう。綱吉のほうが年齢も高いしするので、中継ぎ的意味合いで、弟の綱吉のほうを先に将軍位に据えると。綱吉が息子の徳松(館林徳川家を継ぐことになっていた)を江戸城に入れたとき、光圀が「裏切られた」と口走ったのも、綱吉は「中継ぎ」にすぎないと見られていた証しと言うものだろう。
5代将軍徳川綱吉の統治政策の傾向をみると、つねに自分が将軍家を継ぐことの正当性に疑問符が付けられたことへのインフェリオリティー・コンプレックスが看て取れると言って間違いのないところだろう。
とてもじゃないが、本書の著者、歴史について常識のレベルが低すぎて、到底、研究者なんかに向くとは思えない。ま、悪いことは言わない。大怪我する前に(もう大怪我している?)、さっさと歴史家なんて稼業は廃業するに如くはないと、お薦めするね。
久しぶりに一気に読破!

タイトルを見た時点から、すごく気になっていた本です。
この本は歴史学者の方が、物語のおもしろさを、という編集者の側からの注文を踏まえつつ書いた本です。ですから、歴史学者の書く論文や本の文章に慣れている方には、少々イかれた書き方のようにも感じるでしょう。また、歴史小説や歴史小説家の文章に慣れている人には、いちいち「証拠はない」とか書かなくていいから、という感じを受けるとは思います。
 しかし、この「学問」と「物語」の間を揺れ動く書き方、そして、著者独特の言い回しにはまる人は、少なくないんじゃないかと僕は思います。
 独特の言い回しをいくつかあげると、「ウソツキ!!黄門さまのウソツキ!!」「もはや妄説として、ゴミ箱行きにして良かろう。」
 これらの言葉が具体的にどんな文脈で使われていたかは、読んでからのお楽しみ。



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